広島の名物と言えば、広島焼(お好み焼)や牡蠣が有名だが、B級グルメとして「ホルモンの天ぷら」があるのをご存じだろうか。
広島市の西部では、かつて屠殺場が存在していた関係で、ホルモンを提供する店が多い。
それも調理法は天ぷらだというからビックリである。
ホルモンと言えば、焼いたり煮込んだりが一般的だ。広島県民ではない僕にとって、天ぷらとホルモンの組み合わせはまさに未知との遭遇。
あっさり目のネタを使うことが多い天ぷらに、生臭さの代表格であるホルモンを使うと、いったいどんな仕上がりになるのだろうか。
恐る恐る体験してきたのでレビューしていこう。
天ぷらあきちゃんの外観と雰囲気/住宅街に佇む地元民ご用達の店
広島の路面電車「広電」に乗って、繁華街・八丁堀から10分強。広電を住宅が並ぶ福島町駅で降りたら、徒歩3分ほどで到着する。
住宅街ということもあり、周辺はとても静かだ。人もあまり歩いていない。
中華そば屋なのか天ぷら屋なのか分からない看板に惹かれ、昔ながらの暖簾をくぐってみた。
店内はカウンターが6席ほどとテーブルが3卓あり、こじんまりとした造りである。
入り口すぐには、この店の規模に合わない大きな鍋におでんが入っていて、セルフで好きな具材を楽しめる。何を取ったかは自己申告だ。
驚いたことに、各席にはまな板と包丁が置かれている。提供されたホルモンの天ぷらをセルフで切る為のものだ。
客自ら客席に用意された包丁を使うシステムなんて、もちろん初体験である。聞けば、広島のホルモン天ぷらは、どの店も皆このシステムだそう。隣の席では常連と思しき人が、手慣れた様子で天ぷらを切っていた。
天ぷらあきちゃんで実際にホルモンの天ぷらを食べた感想/全く臭み無しで美味
ホルモンの天ぷら自体が初めてなので、注文の仕方が分からない。
まず、ホルモンの名称が書かれたメニューを見たところで、「チギモ」とか「ビチ」と言われても、チンプンカンプンなのだ。
愛想の良い従業員のお姉さんに言われるがまま、ホルモンは人気の4種、白いご飯とでんがくを注文してみた。
ホルモンスープ「でんがく」はあっさり塩味
天ぷらよりひと足早く、ご飯とでんがくが提供された。
ご飯はわざわざ写真を載せるまでもないので割愛するが、たくわんが乗っていた。
今時、ご飯に直接たくわんを乗せる店なんて、僕は家系ラーメン屋か天ぷらあきちゃんぐらいしか知らない。いい意味で懐かしい。
そしてビックリしたのがでんがくだ。
僕の知る「でんがく」は、こんにゃくに味噌ダレがかかったもので、まさか汁物だとは思いもしない。
ここはホルモン屋。カウンターの端に大きなおでん鍋があったことからも、ホルモンを味噌ダレで煮込んだものだと決めつけていたのだ。
出てきたでんがくをひと口飲むと、あっさりとした塩味だということが分かる。
様々なホルモンが具として入っているのだが、全く臭みがない。それどころか、トロトロに煮込まれていて、噛まずに飲み込めるほどだ。
ホルモン特有の「飲み込むタイミングが分からない」なんて心配は杞憂である。
丁寧に下処理をしたことが伺えるホルモンのダシに、アクセントの柚子の香りが爽やかさを演出していた。
でんがくのあまりの美味しさに、でんがくだけでご飯を平らげてしまったほど。
もちろん、天ぷら到着に合わせ、ご飯をお替わりした。
ホルモンの天ぷらは人気の4種類
ホルモンの天ぷらは、その日の仕入れ状況により、最大で8種類があるという。
今回は、おすすめだという4種、左から「ビチ(通称ギアラ)」「千枚」「ハチノス」「白肉(通称ミノ)」を注文した。
もちろん、「客席に置かれた包丁で切り分ける」という初体験もしてきた。
広島のホルモンの天ぷらは、粉唐辛子を入れた酢醤油につけて食べるのが主流だそうで、僕もそれに習って頂く。
でんがく同様、臭みが全く無くとても柔らかい。普通に噛み切れるほどの柔らかさなので、まな板と包丁が本当に必要か疑問だ。
臭みを完璧に無くすほどの丁寧な下処理をしているだろうに、それでいて旨みは残っているのには頭が下がる。
その旨みを生かせるように、つけダレの酢醤油は酸味控えめで、粉唐辛子も辛さ控えめとなっている。
しかし、わざわざ天ぷらにする必要があるのかは、大いに疑問を感じた。
なぜなら、ここまで丁寧に下処理され旨みだけが残ったホルモンならば、天ぷらの衣をまとわなくても、直に粉唐辛子をまぶした酢醤油に付けて食べれば十分に美味しいと想像できるからだ。
「B級グルメ」に留めておくには勿体ないぐらいのホルモンなのは、間違いない
天ぷらあきちゃんのその他メニューと価格
<ホルモン天ぷら>
白肉…150円
ハチノス/センマイ/ビチ/オオビャク/チギモ/やおぎも/ガリ…130円
<野菜天>
ピーマン/ジャガイモ/カボチャ/ナスビ/サツマイモ/タマネギ/レンコン…120円
<麺類>
ラーメン…650円/汁そば…600円/すうどん…450円
にゅうめん…450円/でんがく…450円/でんがくラーメン…650円
でんがくうどん…550円/でんがくにゅうめん…550円
<おでん>
肉類…150円/その他…120円
※当記事内の価格は全て税込
天ぷらあきちゃんの基本情報、営業時間とアクセス
【住所】広島県広島市西区福島町1-15-5
【電話番号】082-296-2821
【営業時間】11:00~14:00、17:00~21:00
【定休日】木曜日
【キャッシュレス】不可
【アクセス】広電・福島町駅より徒歩3分
立地:★★★☆☆/広島中心地からは遠い
コスパ:★★★★★/庶民的な価格設定
清潔度:★★★★☆/綺麗だが、個人店特有の雑多感
接客:★★★★★/愛想よく、丁寧
入りやすさ:★★★★★/ひとりでも入りやすい
B級グルメ「天ぷらあきちゃん」でホルモンの天ぷらを食べようまとめ
丁寧に下処理された臭みの無いホルモンを堪能できる天ぷらあきちゃんは、住宅街に佇む庶民的なお店だった。
広島焼でも牡蠣でもなく、広島の隠れた名物「ホルモンの天ぷら」を、初体験のセルフカットとともに楽しんでほしい。
特にホルモンのダシが効いた塩味のスープ「でんがく」はおすすめである。とろとろに煮込まれた柔らかいホルモンがやみつきになるはずだ。
広島中心地からは離れているが、路面電車を楽しみながら向かうといいだろう。
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