国内最大規模を誇る路面電車が走る街、広島。
民間企業である広島電鉄が運営し、「広電」の愛称で地元民に親しまれている。
全国的に見ても、路面電車が走る街は、そう多くはない。路面電車に乗ったことがなければ、見たこともない人の方が多いのではないだろうか?
広島を観光するにあたり、観光の足として、広電はとても役に立つ。もしかしたら、「広電に乗ることが観光目的」と成り得るかもしれない。
ところが、広電の乗り方は難関。普段から足として利用している地元民でない限り、戸惑うことが多すぎるのだ。
僕が初めて広電を利用した時に感じた戸惑いポイントは4つ。
- 切符売り場が見当たらない
- 降車ボタンを押さなきゃいけないのにボタンがない
- 条件によって降りる扉が変わる
- 乗り換えが複雑すぎる
恐らく初めて広電を利用する誰もが感じる戸惑いポイントだと思うので、この記事でしっかりと予習をしてから、広電に挑んでほしい。
予習をしなければ乗れない交通機関もどうかと思うが…(笑)
路面電車「広電」の路線図
出典:広島電鉄公式サイト
国内最大規模と言うだけあり、広電の路線は複雑だ。
1号線~9号線の全8路線の規模である。(4号線は忌み数の為欠番)
主に観光客が利用するのは、八丁堀、原爆ドーム前、広電宮島口の3つだろう。JR広島駅からは2号線に乗っておけば、その3つ全てにアクセスできる。
路面電車「広電」玄関口の広島駅から戸惑う
JR広島駅の南口を出ると、広電の乗り場がある。乗り場は手前(JR広島駅側)と奥の2カ所。行き先によって乗り場が異なるので注意しよう。
広島駅からは1・2・5・6号線が出発
手前(JR広島駅側)の乗り場からは、5号線が出発する。
5号線は広島港に向かう路面電車で、観光客ご用達の八丁堀・原爆ドーム前・広電宮島口はどれも経由しない。
奥の乗り場からは、1・2・6号線が出発する。
路面“電車”なのに切符は無し
「路面電車」とは言っても、乗り方はバスに近い。
支払い方法も現金か交通系電子マネーとなっており、切符は存在しない。
券売機を探している人も見かけたので、念の為。
広島駅の乗り場は空気を読んで並ぶ
さて、広電には1両編成の電車もあれば、2両編成の電車もある。3両編成の電車だってあるのだ。
何両編成の電車が来るのかで変わってくるのが、扉の位置である。熟知している地元民ならば、次にくる電車が何両編成なのか分かるのだろう。ちゃんと並んで待っていた。
しかし、我々観光客には、何両編成が到着するのかなんて分かるはずもない。
他の人が並んでいるところに並ぼうにも、この列が1・2・6号線のどの列なのかも分からないのである。
空気を読んで並ぶしかない←解決策無しw
路面電車「広電」車内で戸惑う独特のルール
広電の路面電車は、1両編成が運転士のみのワンマン運転である。複数両編成だと最後尾に車掌が乗務している。この車掌の存在が、車内ルールを複雑化しているのだ。
乗車用扉と降車用扉が存在
広電はバスと同じく、後払いである。その為、運転士がいる扉は降車専用となる。面白いのが、最後尾にいる車掌も運賃回収をするので、車掌がいる扉も降車専用となる点だ。
つまり、運転士も車掌もいない扉は乗車専用となっている。
乗車用扉から降車する場合もある
ところが、交通系電子マネーを利用する際は、一部電車で乗車専用の扉から降車することも可能なのだ。
その一部電車の乗車用扉には、乗車時にタッチするカードリーダーと、降車時にタッチするカードリーダーが設置されている。間違わないようにタッチしよう。
降りる時は降車用ボタンを。しかし、降車用ボタンが存在しない車両も
広電はバスのように、降りたいときは降車用ボタンを押す。
すると、次の電停(駅)で停まってくれるのだ。
しかし、基本的に、車掌のいる編成は降車用ボタンが存在しない。実に厄介である。
降車用ボタンが存在しない場合、どのように降りる意志を伝えるのかと言うと…
特に何もする必要はない。車掌のいる編成は全て各電停(駅)に停まるからだ。
降車後は信号待ちで足止め
広電は道路の中央を走る。その為、写真のように電停(駅)も道路の中央にあるのだ。
つまり、電車から降りて、まずは歩行者用の信号機が青になるのを待たなければならない。
これは乗車時も同じ。信号待ちで何回電車を見送ったことか。急いでいる時は地味に痛い。
路面電車「広電」乗り換えに戸惑う
出典:広島電鉄公式サイト
ここでもう一度、広電の路線図を見てみよう。
茶色の四角で囲われた電停(駅)は、乗り換えが可能だ。
乗り換えのルールはいたって簡単。乗り換えをしないと目的地に着けない場合に乗り換えが可能になる。
したがって、
- 乗っている電車が目的地まで行く場合
- すでに通り過ぎた電停(駅)に戻りたい場合
いずれも乗り換えはできないので注意しよう。
乗り換えはもちろん無料だ。乗り換え前の電車で運賃を支払い、乗り換え後の電車では運賃不要となる。
現金の場合は電車乗換券を貰う
現金で運賃を支払う場合、運転士または車掌から「電車乗換券」を貰おう。乗り換え後の電車で電車乗換券を提示すると、運賃が不要になる仕組みだ。
この電車乗換券の有効期限は当日。
つまり、始発の電車で電車乗換券を貰い、乗り換え電停(駅)周辺でぷらぷら観光をし、終電で乗り換え電車に乗ることも可能なのだ。
交通系電子マネーの場合はデーターで残る為、電車乗換券は必要ない。しっかりと降車時にタッチしよう。
ただし、乗り換え時間は60分。それ以上経過すると、乗り換えた電車で再び運賃を引かれてしまうので注意だ。
乗り換えで電停が分からない
乗り換えの電停(駅)は、様々な路線が重なる交差点である場合が多い。
交差点の上下左右に散らばって電停(駅)が存在している為、土地勘のない旅行者はどの電停(駅)に行けば、乗り換え先の電車に乗れるか分からないのである。
- 電停(駅)から出るのに信号待ち
- 交差点を渡るのに信号待ち
- 乗り換え先の電車(駅)に入るのに信号待ち
この3ステップを踏んで、間違った電停(駅)に辿り着いてしまった時ほど悲しいものはない。
乗り換え先の電停(駅)はどこなのか、ちゃんと運転士または車掌に聞いてから、電車を降りよう。
乗り換え可能なのは同じ電停(駅)のみ
あくまでも乗り換えなので、同じ電停(駅)で乗り換える必要がある。
例えば、広島駅から原爆ドーム前に行きたいのに、間違えて1号線の電車に乗ってしまったとしよう。
原爆ドーム前へは2号線か6号線に乗る必要があるため、1号線を八丁堀の電停(駅)で降り、そのまま八丁堀の電停(駅)で2号線か6号線に乗り換えるのは問題ない。
しかし、ひとつ先の立町の電停(駅)まで歩いて、立町で乗り換えることはできないのだ。
例に出した八丁堀乗り換えならば、進行方向が同じなので、降りた電停(駅)でそのまま待っていればいい。
しかし、例えば八丁堀で9号線に乗り換えて白鳥に行きたいといった場合は要注意。線が交差しているため、同じ電停(駅)名でも場所が異なるのだ。
広電はバス停のように各電停(駅)間が近い。9号線の八丁堀電停(駅)へ移動したはずが、実は隣の電停(駅)だった、なんて事が起こり得る。
複数の電停を同じ電停とみなす場合あり
とてもややこしい事に、「紙屋町東」と「紙屋町西」と「本通」の電停(駅)は、名前こそ異なるが、同じ電停(駅)として扱われる。
本通で下車後、徒歩で移動し、紙屋町東や紙屋町西の電停(駅)で別の路線の電車に乗った場合でも、乗り換えとして扱われるのだ。
路面電車「広電」運賃は明瞭
出典:広島電鉄公式サイト
再び路線図の登場。
広電は、広島市内を中心に運行している。
路線図の左、広電西広島が、広島市内最西端。つまり、東高須から広電宮島口の区間は広島市外という事になる。
2号線のみが唯一、広島市外も走る電車だ。
支払い方法は3種類
広電の運賃の支払い方法は3通り。
現金・交通系電子マネー・1日乗車券である。
現金の場合
運転士または車掌がいる扉から、降りる際に支払う。運賃箱はお釣りが出ないので、事前に両替を済ませておこう。
交通系電子マネーの場合
カードリーダーは乗車用と降車用のものがそれぞれ設置してあるので、きちんと2回タッチしよう。
もし1つの交通系電子マネーで複数人の支払いをする場合は、運転士または車掌のいる扉からしか下車できないので注意だ。
1日乗車券の場合
運転士または車掌のいる扉から、下車時に提示しよう。
広島市内は均一運賃
広島市内は均一運賃で、大人190円、小児100円となっている。
ただし、9号線は走行距離が短い為、9号線内だけで完結する場合は130円均一となっている。
広島市外(宮島線内)は区間運賃
2号線で広電西広島を越えると、広電宮島口までは区間運賃となる。広島市内の均一運賃190円に、距離が延びるにつれて加算されていく仕組みだ。
JR広島駅から終点の広電宮島口まで乗車した場合、270円。これが広電の最高額運賃である。
2号線の現金利用は整理券を取ろう
唯一、区間運賃が設定されている2号線に現金で乗る場合、整理券が必要となる。
整理券が必要なのは次の2つのパターン。
- 広島市外(東高須~広電宮島口)区間から乗車する場合
- 上り電車(広島駅方面)に広島市内から乗車する場合
1の場合、上下線で整理券が必要となる。電車に乗る前に、ホームに設置されている整理券機から取得しよう。
2の場合、均一運賃区間である広島市内から乗車したことを証明する為の整理券だ。こちらは電車内に設置してある整理券機から取得する。
お得な1日乗車券は事前にネットで買える
お得なフリー切符は2種類用意されている。
①1日乗車券
広電の路面電車全線が1日乗り放題。
大人700円・小人350円
②1日乗車乗船券
広電の路面電車全線に加え、広電宮島口から宮島までの航路も1日乗り放題。
大人900円・小人450円
さらに②は宮島ロープウェイが割引になる。
大人往復 通常1,840円→1,350円
小児往復 通常920円→700円
また、1日乗車券と1日乗車乗船券は、デジタル版も用意されており、ネット上で購入したものがスマホに表示される。
料金はデジタル版でも同額。1日乗車乗船券で宮島ロープウェイが割引になるのも同じだ。
ただ、デジタル版の1日乗車券は8時間バージョンも存在する。
8時間:大人600円・小人300円
日中だけ路面電車を多用する場合などに便利だ。
デジタル版は90日前より「MOBIRY」のサイトで購入できる。
MOBIRYはこちら
2025年以降は路線の変更に注意
現在、JR広島駅は建て替え工事をおこなっている。2025年の春に建て替えが終わる予定だ。
建て替え後は、路面電車「広電」の乗り場がJR広島駅2階に移設されるとのことで、それにともない路線の変更が生じる。
出典:国土交通省「広島電鉄株式会社からの軌道事業の特許申請(軌道延伸)に係る審議」
乗り場がJR広島駅2階に移設後は稲荷町まで駅前大橋経由となる。
無くなる電停
猿猴橋町
どの路線も猿猴橋町を経由しなくなるため、廃止される。
路線が変わる電停
的場町・段原一丁目
既存の路線はどれも経由しなくなる為、新設される環状線に組み込まれる。
新設される電停
広島駅から出発する路線は、どれも的場町を経由せずに、直に稲荷町に接続する。
その為、広島駅→的場町→比治山下と経由してる5号線(広島港行)は、広島駅→稲荷町→比治山下経由となる。
それに伴い、稲荷町~比治山下間に新しい電停(駅)ができる予定だ。
観光客泣かせ?路面電車「広電」の乗り方は難関で予習が必要 まとめ
長くなってしまったので、簡潔にまとめたいと思う。
①切符は買わなくて良い
→現金(おつり出ない)・交通系電子マネーで支払い
②運転士または車掌がいない扉から乗車
→交通系電子マネー利用時は乗車用扉から降車可能
③乗り換えは電車乗換券を貰い同じ名前の電停(駅)で
→電停(駅)の場所は運転士または車掌に聞く
④上り(広島駅行)の2号線は整理券を取得する
→広島市内から乗車時は車内の整理券機で
⑤広島駅の奥側の乗り場から乗る
→八丁堀へは1・2・6号線広電宮島口へは2号線、原爆ドーム前へは2・6号線
コメント
地元民よりコメントさせていただきます
①広島駅の乗り場は空気を読んで並ぶ
→空気を読まなくても、広島駅の乗り場には案内窓口があり、係員の方が常駐していますし、多客時には乗り場で係員が乗客の誘導・案内をしていたりもするので、わからなかったら係員に聞きましょう。
②乗車扉から降車する場合もある
→記事で挙げられた、乗車扉部分に降車用カードリーダー設置というのは、一部の形式の電車だけですので、注意が必要です。また、広島駅、広電西広島、紙屋町西など、降車の多い電停では、乗降の多い時間帯は、乗車扉の外で運賃箱を持って待ち構えている係員がいますので、どの扉からでも降りられます(参考…http://blog.moriy.net/?eid=1334465#gsc.tab=0 )。また、終点となる広電宮島口では、駅の出口に改札口があり、駅員が待機していますので、早朝・深夜を除き、電車を降りてから改札口で運賃の支払いを行います。
③広島市外(宮島線の一部)は区間運賃
→宮島線全体が区間運賃です。
④2号線の現金利用は整理券を取ろう
→9号線の江波まで直通する電車も整理券が要ります。
⑤乗車用扉と降車用扉が存在
→降車する人がいなければ、降車用扉からも乗車します。
⑥広島駅からは1・2・5・6号線が出発
→0号もあります。
⑦路面“電車”なのに切符は無し
→広電宮島口には券売機がありますが、コロナの影響で昨年春から使用停止中なので、現金かカードで乗ることになります。また、大型連休とか花火大会開催時とか、多客が見込まれる場合は、宮島口以外でも臨時で乗車券を売る場合があります。
地元の方からのコメント、大変うれしく思います。同時に、いろいろご指摘くださり、感謝の気持ちでいっぱいです。
①広島駅の乗り場は空気を読んで並ぶ
この項目は半分ネタですので、読み飛ばしてください(笑)
②乗車扉から降車する場合もある
連接車は全て乗車用扉にも降車用リーダーが設置されているものだと思っていました。実際には連接車の中でも1000形だけなのですね。
記事は訂正してあります。
また、職員が臨時の運賃箱を用意しているくだりは、事前情報を何件も確認していましたが、実際に広島を訪れた際に自分で確認できなかった為、記事では割愛しました。
③広島市外(宮島線の一部)は区間運賃
これは完全に僕の認識間違いです。広島駅-広電宮島口の2号線全体の呼び名が「宮島線」なのだと思っていました。
記事は訂正してあります。
④2号線の現金利用は整理券を取ろう
広電の公式サイトによると、整理券が必要な場合として2号線が紹介され、9号線の名前は出てきません。
整理券の目的が「異なる料金体制を整理する」事なので、YYさんの仰る通り、9号線にも整理券制度が存在していると想像できます。次回、広島を訪れた際に確認したいと思います。
⑤乗車用扉と降車用扉が存在
広電の公式サイトでは「降車する人がいなければ降車扉からも乗車できる」といった内容の記述が確認できませんでした。こちらも次回、広島訪問時に確認したいと思います。
⑥広島駅からは1・2・5・6号線が出発
1号線から9号線まで。予備知識を携えて広島へ出向いたはずなのに、いきなり0号線の電車がやってきて慌てたものです(笑)
後から調べたところ、車庫へ帰る臨時的扱いの電車であることに加え、公式の路線図にも0号線の記載が無いことから、記事では割愛しています。
⑦路面“電車”なのに切符は無し
コロナ禍での広島しか経験がないので、繁忙期には切符が存在することを初めて知りました。こちらも次回訪問時の宿題とさせていただきます。
②は、広島駅で午後9時までに降りると確認できます。紙屋町西では、平日午前7時くらい~午前10時、土休日午前10時~正午まで、広島駅・広島港行きの乗り場でやっています。横川駅は平日朝の通勤時間帯でやっています。西広島は、休日を含めた朝夕を中心にやっています。五日市は、平日の朝夕の通勤時間帯に行っています。
④は、白島~江波の直通が、早朝や深夜にしかないので難しいですね(ただ、八丁堀の広島駅行きおよび白島線の白島行きの乗り場には整理券の機械があるはずです。)。
⑤は、暗黙の了解みたいなものなので、ホームページには記載ないです。
⑥0号線というのは、2001年に行き先表示を現行のデザインに改めた時に付け加えたもので、それ以前は番号なしでした。地元民以外にはわかりにくく、改悪だと思っています。
詳しくありがとうございます。次回の広島訪問が楽しみになってきました(笑)
しかし、ここまで初心者泣かせの「公共交通機関」は、僕は初めてでした。せっかくの観光資源でもありますので、もっと使いやすくなるといいですね。