横浜の桜木町駅から程近い洋食店「センターグリル」は、昭和21年創業の老舗だ。
全国に広まる定番料理、ナポリタンの発祥がこの店だと知り、訪れてみた。
少しばかりグルメに精通した人ならご存じの通り、ナポリタンの発祥は、横浜のホテルニューグランドである。(諸説あり)
ところがホテルニューグランドのナポリタンはトマトソースをベースとしたもの。ナポリタンが生み出された昭和初期、トマトは高級品で、庶民には手が出せる品物ではなかった。
そこで、センターグリルの初代店主が、だれでも入手しやすいケチャップを使ったナポリタンを考案したのだ。
70年以上経った今でも、センターグリルの3代目店主によって、その味は完全に守られている。
よくよく考えてみると、昭和初期と比べ、スパゲッティー界隈は大きく変化した。
いつしか「スパゲッティー」ではなく「パスタ」と呼ばれるようになり、ミートソースやナポリタンぐらいだった種類も、カルボナーラやペペロンチーノと増えている。
茹で方はアルデンテが正義とされ、ミートソースとボロネーゼの違いも曖昧なまま、聞いたこともないような名前のソースで味わうお洒落な料理となってしまったのだ。
はたして、化石とも言える昭和初期のスパゲッティを食べて、現代の人々は美味しいと感じるのだろうか?
現代の人々を代表し、僕が素直な感想を綴ってみる。
センターグリルの外観と雰囲気
JR桜木町から徒歩5分。戦後、アメリカ軍の占領から免れて闇市が栄えた野毛の繁華街の一角に、センターグリルはある。
昔ながらの庶民的洋食屋といった外観で、一人でも入りやすい。入店前から気分が高まること間違い無しだ。
「カランコロン」と鳴りそうな扉を開け、入店。(実際にはカランコロン音はしないw)
店内は1階と2階があり、いくつかの部屋に分かれているらしい。
僕が通されたのは、「近くに動物園がある」との理由で、動物をコンセプトにした部屋だった。もちろん壁にかけられている時計は、「鳩時計」だ。
店内は床や壁、テーブルや椅子に至るまで、木目調を基本とした落ち着いた懐かしい雰囲気である。
従業員も気さくに話しかけてくれてフレンドリー。下町の情緒溢れる素敵な空間が心地よい。
センターグリルで実際にナポリタンを食べた感想/豪快に食べられる気取らないスパゲッティー
まず、フォークやスプーンが、ペーパーにクルクル巻かれて運ばれてくる。「そうそう、これこれ!」洋食店のあるべき姿と言ったところだろうか。
食事が盛られる食器も、昔ながらの銀食器で、時代を感じる。
注文前から期待ばかりが膨らむではないか!
センターグリルは洋食店なので、ナポリタン以外にも様々な洋食メニューを取り揃えていた。
今回はナポリタンに加え、いくつかのメニューを紹介したいと思う。
ケチャップの昔ながらの庶民的ナポリタン
センターグリル側は「パスタ」と表記しているが、これは間違いなく「スパゲッティー」である。(このニュアンス、伝わるかな?)
具材はハム、オニオン、マッシュルーム、ピーマンと必要最小限。銀食器に千切りキャベツやマッシュポテトと共に盛られて提供された。
モチモチとした食感の太麺は、もちろんアルデンテではなく、茹で置きだ。
ケチャップは市販されている酸味の強いものではなく、甘みの強いもの。恐らく野菜と一緒にケチャップを煮込んでいるのではないだろうか。
シャキシャキ食感のピーマンが、良きアクセントとなっている。
今時のお洒落なパスタをホワイトカラーと比喩するならば、センターグリルのナポリタンはブルカラーだろう。
気取ったナポリタンではなく、ガツガツ食べる系の庶民的ナポリタンに仕上がっているので、スプーンを使ってクルクル巻いて食べる必要などない。
素直に「旨い!」と思った素朴なナポリタン。ぜひお試しあれ。
大きなエビフライの上ランチ
次に紹介するのは、チキンピカタとエビフライが盛られた上ランチ。
ただのランチではなく、「上」ランチなのだから、それなりの期待はしてしまう。
甘くもなく、濃すぎることもなく、薄すぎることもない。バランスが取れたソースを豪快にかけたチキンピカタは、手のひらサイズのビックリする大きさ。
サクッとした衣の食感が、旨さを引き立てる重要な役を担っている。
そしてエビフライ。
衣ばかりで大きさをごまかすエビフライが蔓延る中、センターグリルのエビフライは薄衣である。つまり、海老本体が大きいということだ。
お洒落なタルタルソースではなく、庶民的なマヨネーズが添えられているのも素晴らしい。
インパクト大なミックスサラダ
みずみずしさが食欲をかきたてるミックスサラダは、とても具だくさん。
パリッとした歯ごたえのレタス、甘みの強いトマト、シャキッとしたきゅうり、柔らかく茹でられたホワイトアスパラ。そして味のアクセントにセロリも添えらえていた。
ひとつひとつの野菜が、それぞれ主張している。村上春樹風に言うならば、「特定の主人公を持たない群像劇のようなサラダ」だ。
数人でシェアできるほどの量があるので、一人で訪れた時はミニサラダを注文しよう。
センターグリルのその他メニューと価格
<スープ>
カップスープ…280円
ポタージュスープ…480円/コンソメスープ…480円
<魚介料理>
カキフライ…900円/エビフライ…1,200円
帆立貝柱フライ…1,200円
シーフードミックスフライ(エビ・牡蠣・白身魚)…1,000円
<肉料理>
ハンバーグステーキ…850円/イタリアンハンバーグ…900円
チーズハンバーグ…900円/しょうが焼き…850円
ポークカツ…850円/上ポークカツ…1,150円
チキンカツ又はソテー…1,000円/チキンピカタ…1,000円
レバーベーコン…1,000円/ポークチャップ…1,150円
ビーフシチュー…1,150円/タンシチュー…1,400円
ヒレカツ…1,250円/サーロインステーキ…2,800円
<パスタ>
スパゲッティーイタリアン…770円
スパゲッティーナポリタン…770円
スパゲッティーミートボール…820円
シーフードスパゲッティー…920円
スパゲッティーボロネーゼ…920円
マカロニグラタン…920円/カキグラタン…1,100円
エビグラタン…1,200円/ドリア(エビ、シーフード)…1,250円
<玉子>
ハムエッグ…770円/オムレツ…770円
<ライス>
ハヤシライス…750円/チキンライス…750円
フライライス…750円/オムライス…750円
オムハヤシライス…880円/オムカレー…880円
特製オムライス…880円/カレーライス…750円
特製辛口カレー…820円/カツカレー…1,030円
ハンバーグカレー…1,080円/ライス…170円
<サラダ>
ハーフサラダ…300円/生ヤサイ…580円
ポテトサラダ…580円/アスパラ…680円
ハムサラダ…680円/ミックスサラダ…800円
<オードブル>
オードブルA(2人前)…750円
オードブルB(3人前)…1,100円
オードブルC(4人前)…1,450円
<ランチ(夜でもOK)>
ランチ(チキンカツ・ハムステーキ)…750円
上ランチ(チキンピカタ・エビフライ・ミニスパ)…950円
スパランチ(イタリアンスパ・チキンカツ)…850円
浜ランチ(オムライス・チキンカツ)…1,050円
特製浜ランチ(特製オムライス・チキンカツ)…1,250円
野毛ランチ(スパランチ、カレーソースorハヤシソース)…1,100円
<トッピング>
チキンカツ1枚…350円/エビフライ1本…350円
カキフライ2個…350円
ライス大盛…+100円/スパゲッティー大盛…+200円
※当記事内の価格は全て税込
※の基本情報、営業時間とアクセス/
【住所】神奈川県横浜市中区花咲町1丁目9−3
【電話番号】0452417327
【営業時間】11:00~20:45(L.O.)
【定休日】月曜日
【キャッシュレス】不可
【アクセス】JR根岸線「桜木町」駅から徒歩5分
▶公式サイトはこちら
立地:★★★★★/駅から近く便利
コスパ:★★★★★/とても高い
清潔度:★★★★★/とても綺麗
接客:★★★★★/親しみやすい
入りやすさ:★★★★★/ひとりでも入りやすい
ナポリタン発祥の店「センターグリル」で味わう懐かしい洋食まとめ
よく、通ぶった人が「ナポリタンはイタリアンじゃない」とか、「ナポリにはそんな料理は存在しない」などと講釈を垂れるが、当たり前である。日本人が考案したのだから。
ホテルニューグランドで誕生したナポリタンを、一気に庶民的な味にしたセンターグリルの功績は大きい。
桜木町駅から徒歩5分と、立地も最高だ。
創業の昭和21年当時のまま、現在まで受け継がれるナポリタンのレシピは、唯一無二。懐かしさと素朴さを兼ね備えた、豪快なナポリタンをぜひ堪能してほしい。
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